古い家のノスタルジー_佇まいを残すこと

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週末の家。。

午後の光が 挿しこみ始める 夏の窓辺。

濃く茂った 木々の葉が 太陽を透かして
緑のグラデーションを織りなす様を 映し出す木製の組子窓。

時を経た木部は、、
飴色を通り越し、黒く鈍い光を放つ。。

古い家ならではの味わいってありますよね!
夏が来ると、、特に、、昔住んでいた家を思い出し
懐かしさに、くぅ~っと胸をしめつけられることがあります。。

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↑  写真の家は、、私と同い年の家。

その懐かしさを募らせる家のひとつです。

オイルショック当時で、材料がない時代で
ラワンや唐松をつかって建てられた週末や休暇をすごすための簡素な家。

断熱材もないし、、窓も木製だし、、外壁も下見板張り、、屋根もトタン。
なのに、三十云年間、雨漏りもせず、、腐りもせず、、佇んできた潔さ!

軒先や外壁の一部に朽ちたような箇所もあったけど
メンテしてあげて、少し治せば、まだまだ行けました。。。
週末や休暇のためだけの家とはいえ、、素晴らしいです!

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この家、、私たちが所有していたのは、ほんの数年でしたが
元の持主の老婦人が、長年、、慈しんで大切に使っていらした家。

愛された家にしか、かもしだすことのできない空気感と
その佇まいの良さに一目惚れした家でした。

買い取った業者さんに、手を入れられる寸前に出合ったのが幸運?!

そのタイミングが、私の恋心に火をつけて、、、
どうしてもこの佇まいを残したい!!!!という想いのもと、、、
そんなこんなの経緯を経て、、、、( 長くなるので割愛 ^^; )
私たちの家になったのでした。

今は私たちの手許を離れましたが、、
新しい住人になった方も、この佇まいに、心底惚れてくださったご夫婦。

だからこそ、手放す気になったのですが、、、
でも早まったかな~と思うくらい、、
素敵な家でしたので、ホント懐かしいです。。。(笑)
 



またまた前置きが長くなってしまいましたが、、、
古い家と今の家のことを、最近色々とモノ想う出来事がありました。

今、埼玉県の菖蒲で、築35年の母屋と築45年位の離れがある家を
リフォームする相談を受けています。

離れは取り壊すという当初のお話でしたが、、
あまりの佇まいの良さに、、牛尾と二人、現調しながら感心していたら、、
それに気付いた施主さんが、、その良さを再認識してくださって
その離れも、、お父上の書庫兼書斎、ゲストルームとして活きることになりました。

日曜日に、耐震診断のため、改めて色々と詳しく見てきましたが
やっぱり腐っていない。。状態はいいんです。。
築30年くらいの建売住宅だと、壁の中身は腐ってボロボロ。。
という酷い状態を見受けることもあるのですが、、そこのお宅は大丈夫。

母屋は色々とリフォーム遍歴を重ねているので
離れほど条件はよろしくない部分もありましたが、でも優等生。
ただし、耐震的に云えば、、残念ですが劣等生になるので、、
古い家の佇まいを壊すこと無く、耐震的にどう工事するか悩みどころ。

でも過剰なことを一切省いて、建物のカタチやつくり方で工夫していた
昔の家の方が、、やっぱり腐らずに長持ちしているんですねー。
それが、よ~く解りました。

寒かったら、コタツやストーブで暖をとる。。
夏は、風通し良く建てられているので、、たいがいの日はクーラーなし。
だからお聞きすると光熱費も驚くほど安い。。
でも、そんな暮らし方で、困ることはないとの施主さん談。。

ただ、太陽光発電やエコキュートも気にされていらしたので、
モチロンその説明もさせていただきましたが、、、
今の暮らし方を拝見すると、過剰設備となってしまい、、
かえって光熱費が高くなる公算が高い。。。

私たちは、何でも新しいモノをお勧めする立場ではないので、、
施主さんの暮らし、、将来も含めた暮らしを共に考えて
不要なモノにはハッキリとNOを伝えさせていただくのです。。

残念に思われたら申し訳ないな~と思ったのですが、、、
施主さんもやっぱり!と一言。良かったです。
そんなやりとりって大切ですね。

省エネ法やら何やらと、、国全体で向かっている方向と逆行してしまいますが、、
過剰なまでの断熱や省エネ対策をするより、、
そんな暮らし方の施主さんのほうが、
ある意味ずっとエコなような気がするんですよねーー。
「 住む人の暮らし方次第の対応でいい 」 それが現場での実感。
 



土曜日に聞いてきた 「瑕疵」の事故事例からも
改めて学ぶことが多々で、(講座とっても良かったですよー!それはまた…)
今、頭のなかで色んなことが駆け巡っています。

もしこの先、、木や材料が手に入らないとして、、
自分の家を、今、建てるとしたらどんな家を建てるかで、
牛尾と、、日曜日の帰り道、ひとしきり話し込んでしまいました。

一番大切なのは、、色んな流行りに踊らされず
大本のところを、はき違えてしまわない「軸芯」を忘れないこと。かな。
そしてどう新しいことを、日々の仕事に反映させていくか。。勉強ですね。。

でも、古い家っていいですよね~。
今の新しい家には無い佇まい。。堪らなく好きです~♪
リノベーション、、リフォーム、、古い家を残すお仕事をさせていただくのは、、
ある意味、、新築同様 (いやそれ以上?^^;) に大変ですけど、、、
それ以上のやりがいやヨロコビもあります。

今回も施主さんに喜んでいただけるように頑張りたいと思っていま~す! (出美)

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  最後まで読んでいただき
  ありがとうございました!

≪この記事に関連する過去ブログも宜しかったらどうぞ~♪≫
「 建築家が建てた幸福な家 」
「 改めて家の不具合「瑕疵」のことを学ぶ 」

Comments [8]

いいひ様、おはようございます!!
いつもながら素敵な写真と素敵な文章に感動してしまいました~!!

私が生まれ育った家は、戦前からの建物だったので、
ライフスタイルはまさにその老夫婦みたいな感じでした。
今は大部分が建て替えられてしまいましたが、
それでも「離れ」の部分はそのまま残されています。
やっぱり夏にエアコンをつけた覚えがほとんどないんですよね~。


> 省エネ法やら何やらと、、国全体で向かっている方向と逆行してしまいますが、、
> 過剰なまでの断熱や省エネ対策をするより、、
> そんな暮らし方の施主さんのほうが、
> ある意味ずっとエコなような気がするんですよねーー。
> 「 住む人の暮らし方次第の対応でいい 」 それが現場での実感。

国の進めていることって、本当に住む人の役に立つことなのかな・・?と思うことも時折ありますね。
性能が高いはずの材料でも経年劣化の激しいものも多かったりしますので・・。

私の講演の質疑でもあったのですが、今後の住宅・・というか、住まいは、
数字で測る客観的な基準(ハード面)ではなくて、その個々人のライフスタイルや、
何をもって快適とするか(ソフト面)がより一層重視されるのではないか?
というふうにお答えいたしました。

「断熱や省エネ、耐震など、ほどほどでいいんじゃないの・・。」
ということを伝えたことになります。。(笑)
もっと大事なことがあるんだよ・・という意味でお話ししたのですが、
いいひ様のお客様のように、共感していただければいいですね。

頭で考える性能ではなくて、自分の感性が喜ぶ住環境作りが
もっと主流になるといいな・・なんて思いました。
また、いいひ様とお話しできるとおもしろいかもしれませんね。

長文、大変失礼しました。
そして、ありがとうございました。

テリー様

おはようございます!

>私が生まれ育った家は、戦前からの建物だったので、

すごいですね~!今でも「離れ」があるんですよね。
耐震性の問題は残りますが、古い家だからこその良さは残してあげたいですね。。

>性能が高いはずの材料でも経年劣化の激しいものも多かったりしますので・・。

なるほど!テリーさんは、施工者としての経験もおありなので
材料のこと色々ご存知なのでしょうね。
わたしも、現場で、職人さんから教えていただくこと多々です。
法律や商品の詳細は知らなくても、家にとって良いモノは何なのか、、
本質でモノを見抜いて教えてくださる大工さんを心から尊敬します。
そうではない、やっつけ仕事的な方も中にはいらっしゃるので
一概には言えませんが・・・

でも「ほどほど」具合って、お客さまにお伝えするのって
なかなか難しいですよね~(^^)
このブログで云わんとしたかったことも、伝わっているのかどうか実は疑問です~(^^;)
私自身も、まだ思うこと勉強すること多々なので仕方ないですけどね!

テリーさんのご意見、大変ためになりました。
そして、同じふうに考えていらっしゃることも解って
とても心強く思えました。

いつも、元気をいただくコメント!ホントにありがとうございます!!!

この窓辺、、、以前もUPされていましたよね?

窓辺だけでも素敵だと思いましたが、外観もまた簡素で素敵、、、
もし住み替える機会があったら、シンプルな小屋のようなおうちが良いな、、、と思っているのですが、まさにこんな感じ!
そして、こんな空間が作れたら、、、と、目指したい雰囲気でもあり、、、
やっぱり、良いと思うもののツボ(?)が同じなのですねー。

ところで、菖蒲町のリフォームのお話は、Yさんのお宅ですか?
だとしたら、とっても嬉しいです。
いろいろ制約があるようで、いいひさんにお願いするのは難しいかと思っていたので、、、

keikoさま

こんにちは!
そうです。。去年も同じ時期に違うアングルで載せましたねー。
やっぱりこの時期になると、懐かしく思い返しているようです(笑)。

わたしも自宅ならこんな感じの家に住みたいですー。
執着するわけではないですが、、、この家はホント大好きでした。
いつかこんなふうに簡素でかつ佇まいの良い家を建てるのが目下の目標かな(笑)。

菖蒲町は、、、そうです。Yさんのお宅です!
打合せは、ゆっくりですが、、、確実に進んでいます。
来年3月までには必ず終わらせる予定。
とっても善い方ですねー。
喜んでいただけるように頑張りますね!

いいひ様、おはようございます!!

これはお節介かと思ったのですが・・・、(^_^;)

> すごいですね~!今でも「離れ」があるんですよね。
> 耐震性の問題は残りますが、古い家だからこその良さは残してあげたいですね。

戦災に遭っていない金沢は、戦前の建物が意外と多く残されています。
それらのリフォーム工事に携わっていたときに思ったのですが、
今の在来工法と違い、伝統工法
(ボルト・釘を使わず、胴差や通し貫で剛性を取っている、コンクリート基礎もない。)
で組まれているものも多く、3年前の能登地震の時も壁一つ割れていない建物もそれなりにあります。

私が現調の時に見るのは、主に湿気の影響とシロアリの被害、
それ以外には壁の微妙なゆがみ、床の不陸などでしょうか。
伝統工法でしっかりと組まれていても、周辺の湿気の影響でダメになっている建物も当然ありますから。

耐震的に一番不安に思った建物は、
いわゆる材料のない時代(私たちが生まれた頃?)に大量に作られた
建売住宅が多かったように思います。
すでに湿気やシロアリにやられていて、手が付けられないものも多かったです。。

でも・・、伝統工法で作られた家って、現状の構造計算では、×になっちゃうんですよね~。
ちょっとジレンマを感じてしまいます・・。

なんとなく、いいひ様に知っていただきたくてつい書き込んでしました~。
読んでいただき、ありがとうございます!

テリー様

こんばんは!
スミマセンお返事遅くなってしまいました。
今週は打合せが多く、、お引渡もあり、、何やらバタバタしておりました。

伝統工法の家についての情報ありがとうございます!

伝統的な家づくり、、色んなジレンマを感じながらも、
残していかなければ…ということで、、近山スクール東京でも学んでいます。。
お仲間の設計事務所の皆さんも、みんな伝統工法が好きで、大切に思っていらっしゃって、熱心に勉強会に参加されていて
色々と教えてくださいます。

構造計算ではNGになってしまうというのは一概にもどうやら云えないようで・・・少し光明も見えてきたのでしょうか。。
心あるつくり手さん達が奮闘されて色々国にも働きかけているようです。

>耐震的に一番不安に思った建物は、
>いわゆる材料のない時代(私たちが生まれた頃?)に大量に作られた
>建売住宅が多かったように思います。

↑ そうなんですよねーー。
ホント酷いモノが多いので、、そんな家に出合うと
やるせない気持ちになってしまいます。。。

色々法的な整備が変わってくるなかでも
しっかりとブレない視点で家づくりに取り組まなければいけませんね。。。

また色々と教えていただけるとシアワセです!
どうもありがとうございました!!!!

西の魔女の家でコメントをさせていただきましたら、 温かな御返事をいただきありがとうございました。

私は今 北関東の山にある工房に住んで仕事をしております。たてて10年になりますが、一昨年から東京にあった部屋も引き払い本格的に山の生活になりました。
とはいえ、まだここを終の住処とも思えず、今の工房をリフォームして今後に備えようか、それとも別の場所を探そうかと楽しく苦しく思案中です。

この記事にあるような佇まいの家にとてもひかれます。

いつか気持ちが決まりかけたら ご相談させていただきたく、これからもブログを楽しみに拝読いたします。

良い一年となりますようにお祈りいたします。

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プロフィール

写真:牛尾 出美

一級建築士
牛尾 出美
(ウシオ イズミ)

1973年2月生まれ。暮らしと家が大好きな女性建築士。東京都江東区のリノベーションしたSOHOマンションで住宅設計事務所を運営。
シアワセを感じるコト&モノは、猫・カメラ・旅・花・珈琲・映画・読書♪

いいひ住まいの設計舎 一級建築士事務所

代表:
牛尾圭一、牛尾出美
資格:
一級建築士2名
構造設計一級建築士1名
一級施工管理技士1名
住所:
東京都江東区東陽2-3-1-106
電話:
03-3648-5711
FAX:
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