忘れない日_駆け出しの頃

sunrise20110117.jpg


16年前の朝、テレビから映し出される映像に目を疑いました。



阪神大震災が起こった日。

当時私は21歳。

小さなゼネコンの設計部に勤め始めて1年にも満たない頃。



朝、出社すると、事務所内の映りの悪い小さなテレビに、上司達がかじりつき、

惨状の状況を食い入るように観ていました。。



設計部は、事務所の一番奥の空間。

まだ事務所に馴染めなかった私は (当時から変わらず人見知りが激しかった…)

みんながテレビを見ている中、ひとり製図板に向かい図面を書いていると、

部長から、「 おーい 、ちょっと来いや 」と、テレビの方に呼ばれました。

「 これは観ておいた方がいい 」 と、一緒に観た記憶があります。



最初に勤めたところは、良い意味でお役所体質な固い会社。

小さな建設会社の設計部。

地元商店街のオーナー住居店舗付賃貸住宅や、

地主さんのビル、マンション、アパートを多く手掛けていました。



当時私の上司だった57歳の設計部長の信条は、、

( 直接的に語りはしませんが、一緒に仕事をしていて感じたことです )

 



 無駄なデザインはしない…

 デザイン優先の設計はしない…

 納まり的に少しでも心配があることはしない…

 構造は安全側に配慮する…





設計部のことを、設計事務所案件の仕事もする工事部からは、、

つまらない設計しかしない設計部と揶揄されることもしばしば。



でも、部長は自分の立場、、

建設会社の設計部として大切な事は何かを見極めて、

それを貫いていらしたんだろうなぁと、今なら思えます。



そんな部長からは、私が図面を書いていて迷うところがあって質問すると、

必ず、、、

「 迷ったら、安全側に考えろ 」 と、

いつも云われていました。

あと、、、自己満足だけのために、無駄なことをするなと、怒られもしました。





若い頃に刷り込まれたことは、忘れません。。。





その会社は、結局それから三年後に倒産してしまいましたが、、

そこで学んだ刷り込まれた建築へ向き合う姿勢が、、

その後就職した超多忙の、ある意味イケイケの会社で、

日々の実務でぶつかる建築業界の矛盾や、、色々…

ホント色々なことで迷ったり悩んだりする自分を支えてくれたと、今、感じ入ります。



トップダウンでモノゴトが決まる…

上が、「 安く 」 と云えば、その言葉だけが残り、

下で動く人達の云い訳になって、

「 安かろう悪かろう 」 が、当然の仕方のないことになってしまう。



また、本来、「 丈夫 ・ 安全 ・ 強さ 」 というコトは、

家を建てる上で、満たされていて然るべき要素。

多分、家を建てる方は全てそう感じていると思います。



その上で、住みやすさやデザイン性を求められるわけですが、

ここでも、トップダウンの怖さがあって、

施主さんの何気なくご要望される一言が、、



デザイン優先の雨仕舞の悪さや、、

間取り優先の構造的な弱点や、、

はかなく朽ちやすい素材の選定、、



に繋がってしまうこともある。。



人間がやることにはそんな弱さがあります。そんな怖さがあります。

でも、それは、在ってはいけないことだと、強く強く思います。



何がベストかは、、色々な考え方があり、、正解は判りません。。



全てをパーフェクトにできないコトもあり、日々迷いますが、

駆け出しの頃に、刷り込まれた、、

「 安全側に考えろ 」 

と、いうことだけは忘れないように心掛けて、この仕事に向き合っています。





毎年、この日になると、心が引き締まります。



同じように感じる方が沢山いらして、、そんな想いが繋がっていき、、

きっと良い方向へ進んでいくと信じています☆ 



追悼式のニュースを見て、、 私も心から… 合掌 。



  

  家での日々の暮らしが心地よく、、

  住む人の幸せに繋がりますように、、

  心を込めて ♪ (出美)







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「 雲の上には青空 」

Comments [4]

いいひさん、こんにちは。

阪神大震災、この日から木造が弱くなってしまったような気がします。
私も、資格をとって、これから!と言うときだったので
かなり辛い思いをしました。就職先がないのです。
私自身も、木造で!と言う気持ちを、曲げなかったのも原因ですが。
それから、改正があったりと・・・色々ありましたが。

また、ここへ来て自然素材、自由設計が見直されて来た事が、
とってもうれしいですし、続けて良かったと感じていました。

私も「安全側に考えろ」の方です。
施主様は、キチンとした説明には、耳を傾けてくれます。

良い物を使えば、良い物が出来てあたりまえ。
予算の中で、どこまで近づけるかでしょうか?
もちろん私達の生活もありますから・・・・・
この辺が、分かれ道なのではないかと思います。

現在、自分が建築の仕事に、付けないでいるのも
曲げない自分がいるから、ではないかとも思うけれど
曲げないで成功している人もいる。と思うと
頑張って欲しいなと、感じていますよ。

ぐだぐだと長くなってしまいました、すみません。

はじめてコメントさせていただきます
いつも素敵な文章拝見させていただいてます

私は神戸に住んでいますので、震災の惨状は
直接目の当たりにしました。
建物がこんなに簡単に崩れてしまうものかと
言葉もでませんでした
戦争映画なんかで見たような風景が、延々と
続いていましたよね・・・

そんな体験をしているのに自分がリフォームの
仕事でプランニングするとき
この柱ジャマだから取りたい。壁、無いほうが
いいよね・・・なんてプラン優先で考えてしまいます

「安全側で考えろ」「無駄なデザインはするな」
まったくその通りだと思います

いまでも震災の後遺症で苦しんでいる人、生活を
立て直せずにいる人がいっぱいいます
住む人の命、財産を守る家作りは建築士の責務ですね
改めて、肝に銘じて・・・
プランニングしなきゃと思いました

長くなってすみません

これからも素敵な文章、楽しみにしています!

たかさん様

阪神大震災以降にしか、私自身木造建築に携わっていないので、
木造が弱くなったという実感は正直ないのですが、、
でも、地震直後、ハウスメーカーさんや2×4の家が増えたのは、記憶に残っています。

求人にも影響があったのですね。。

でも、どんな工法であれ、きちんとつくることが出来たらいいと思います。
施主さんにも、そんな観方をしてくださる方が増えているとも感じるので、、
その時選んだ工法で、良い家を残していけるよう心を尽くしたいと思っています♪

コメントありがとうございました!!

haha.i様

はじめまして♪
コメントとても嬉しく読ませていただきました!

阪神大震災を間近で体験されたのですね…
今も後遺症で苦しまれている方々がいらっしゃるとのこと、
胸が痛みます。。。

家づくりをしていると、色んな場面に出合いますが、
忘れてはいけない「軸芯」みたいなモノを持ち
迷った時の判断基準にしていきたいなぁと思っています☆

同じ建築士として 良い家を残していきたいですね!!
また気軽にコメント残してください♪
ありがとうございました!!!

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プロフィール

写真:牛尾 出美

一級建築士
牛尾 出美
(ウシオ イズミ)

1973年2月生まれ。暮らしと家が大好きな女性建築士。東京都江東区のリノベーションしたSOHOマンションで住宅設計事務所を運営。
シアワセを感じるコト&モノは、猫・カメラ・旅・花・珈琲・映画・読書♪

いいひ住まいの設計舎 一級建築士事務所

代表:
牛尾圭一、牛尾出美
資格:
一級建築士2名
構造設計一級建築士1名
一級施工管理技士1名
住所:
東京都江東区東陽2-3-1-106
電話:
03-3648-5711
FAX:
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